不倫の慰謝料に関するQ&A

不倫の慰謝料に関するQ&A

Q不倫の慰謝料に関して時効はあるのですか?

A

1 不倫の慰謝料請求の時効
 不倫についての慰謝料を請求する法的根拠は不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条)ですので,請求する者が損害および加害者を知った時から3年(民法724条1号)の消滅時効,不法行為の時から20年(民法724条2号)の除斥期間があり,請求する者はこの間に請求を行う必要があります。
 個々の不倫をした行為を不法行為としてとらえれば,請求をする側が不倫について知ったときから,この消滅時効が進行すると考えられています(最高裁平成6年1月20日判決参照)。

 

2 近時の最高裁判例について
 従来は,不倫によって離婚することになった場合,慰謝料を請求する側は,不倫の相手方に離婚をしたことによる慰謝料を請求できるとされていました。
 そして,その場合の時効の起算点については,離婚が成立して初めて評価できるものであることから,離婚の成立時が時効の起算点になると考えられていました(東京高裁平成10年12月21日判決等参照)。
 しかし,近時の最高裁判決では,「夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」とされました(最高裁平成31年2月19日判決)。
 そのため,今後は,個々の不倫についての不法行為責任についての慰謝料請求はともかく,離婚に伴う慰謝料請求は原則としてできないこととなりましたので,消滅時効の起算点を離婚時とすることはできません。
 なお,最高裁は,「上記特段の事情」とは「単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるとき」としています。

Q不倫相手が誰かわからないのですが,慰謝料請求はできますか?

A

1 配偶者への請求
 不倫相手が特定のだれかということが判明していない場合であっても,慰謝料を請求する方の配偶者が不倫をしている事実がSNSのやりとりや本人の自白等の証拠から明らかになっていれば,その配偶者に対して慰謝料請求をすることは可能です。
 その際の慰謝料額については,慰謝料請求の法的根拠である共同不法行為に基づく損害賠償請求権は不真正連帯債務とされていますので,配偶者に対して,自らの精神的損害の全額を慰謝料として請求することが可能です。

 

2 不倫の相手方への請求
 他方で,不倫の相手方に対しては,だれかが分かっていない場合には,請求をすることができません。
 また,不倫の相手方の氏名が分かっていても,その連絡先や住所が分からない場合には,請求することは難しいでしょう。
 この場合,興信所や探偵を使っての調査や,車両ナンバーやその他の判明している情報を手掛かりに,弁護士による23条照会などの方法を用いて調査をする必要があります。

Q肉体関係は1回だけしかないのですが,それでも慰謝料の金額は低くならないのですか?

A

1 不貞の慰謝料額の相場

 夫(または妻)がいる者が夫(または妻)以外のものと肉体関係を持った場合,浮気をされた夫または妻は,浮気をした妻(または夫)の浮気相手に対し,慰謝料の請求をすることができます。
 この場合,浮気相手に対する慰謝料額を決める際,明確な基準はなく,過去の裁判例を見ると,概ね100万円~300万円とかなりの幅がある中で,ケースバイケースで金額が認定されています。
 従って,このような一応の相場はありますが,かなり金額に幅があることとなります。

 

2 慰謝料額の決定において考慮される事情

 慰謝料は,浮気をされた夫または妻の精神的な苦痛の大きさによって認定されます。
 概ね,次のような事情は精神的な苦痛の大きさを推し量る事情として参考にされます。

・肉体関係を持たれたことによる離婚あるいは別居の有無(ある方が通常は精神的苦痛が大きくなります)
・婚姻してからの期間(長いほど通常は精神的苦痛が大きくなります)
・肉体関係を持った期間や頻度(長いほど,あるいは多いほど通常は精神的苦痛が大きくなります)
・従前の夫婦間の関係性(良好であった方が通常は精神的苦痛が大きくなります,逆に既に破綻に瀕していたのであれば精神的苦痛は小さくなるでしょう)
・夫婦間の子供の有無(いれば通常は精神的苦痛は大きくなります)
・謝罪の有無(ない方が通常は精神的苦痛が大きくなります)

 

3 肉体関係は1回だけのケースの慰謝料の金額

 慰謝料額は様々な事情を考慮して,ケースバーケースで判断されますので,肉体関係の回数だけでは必ずしも決まりません。
 たとえ1回の肉体であっても,それが原因で離婚等に陥っていれば,必ずしも低額になるとは限りません。
 ただし,やはり肉体関係が1回であることは,慰謝料額が低額になる方向の事情であるとは言えるでしょう。

 

4 弁護士への相談

 不貞の慰謝料は,様々な要素を総合的に考慮して主張しなければならず,また,証拠があるのかによっても結論が大きく異なってきますので,弁護士に相談されることをおすすめします。
 東京で不貞慰謝料でお悩みの際は,弁護士法人心にご相談ください。

Q相手が既婚者だと知らずに交際していたのですが,相手の配偶者から慰謝料を請求されました。この場合でも支払わなければならないのですか?

A

1 不貞の慰謝料

 民法709条は,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めています。
 そして,既婚者と肉体関係を持った場合に,不貞をされた配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負うのは,この民法709条が根拠条文となります。
 つまり,故意または過失による行為によって婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法律上保護される利益を侵害したから,不貞をされた配偶者が被った精神的損害を慰謝するための賠償金を支払わなければならない,ということになります。


2 相手が既婚者であったことについての故意又は過失

 ⑴ 肉体関係を持った相手が既婚者であることを知っていた場合
 この場合は,不貞をされた配偶者の権利(婚姻共同生活の平和の維持)を侵害することを認識しながら肉体関係を持ったと言えますので,故意による不法行為に該当し,不貞をされた配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負います。
 ⑵ 肉体関係を持った相手が既婚者であることを知らなかった場合
 相手が既婚者だと知らなかったとしても,注意をすれば知ることができた場合は,過失により不貞をされた配偶者の権利を侵害したと言えますので,慰謝料を支払う義務を負います。
 例えば,肉体関係を持つこととなる相手が配偶者と子どもと思われる人物と一緒に街中を歩いていたのを何度も目撃していたにもかかわらず,独身であるとの説明を安易に信じて肉体関係を持った場合は,過失行為により不貞をされた配偶者の権利を侵害したと言えるでしょう。
 他方,お見合いパーティーに参加したところ,独身と偽って参加していた異性と意気投合し,交際を開始して肉体関係を持ってしまったような場合,その異性が既婚者であることをうかがわせる話を全くしておらず,不自然な行動や様子(例えば自宅訪問を何度も拒否していたような場合)もなかったのであれば,過失は否定される可能性が高いでしょう。


3 実際はどうか?

 交際関係を伴う不貞行為は,勤務先の同僚・部下や昔の友人が相手方であることが多く,その場合は,既婚者であることを知っているのが通常です。
 また,結婚相談所は独身証明書を提出しなければ登録できませんので,結婚相談所で紹介された相手が実は既婚者だったということはまずあり得ません。
 そのため,相手が既婚者であることを知らずに「交際」していたというのはあまり想定できず,相手が既婚者であることを知らずに肉体関係を持ってしまったというのは,飲み屋で意気投合してホテルに行ってしまったとか,街中でナンパされてホテルまで行ってしまった,というケースにほぼ限定されるでしょう。
 この場合,例えば不貞をした配偶者が財布にラブホテルの領収書を入れっぱなしにしていたため他方配偶者に不貞行為が発覚した場合でも,不貞行為の相手方が誰なのかまでは分からないケースがほとんどでしょう。
 

Q配偶者との離婚が成立していない場合でも,不貞相手に慰謝料請求をすることはできますか?

A

1 離婚が成立していなくても不貞相手への慰謝料請求は可能

 配偶者が不貞をした場合,配偶者との離婚の成否にかかわらず,不貞相手に対して慰謝料請求をすることができます。
 ただし,慰謝料請求が認められるのは,不貞行為の当時,夫婦関係が破綻していなかった場合に限られます。


2 離婚せずに不貞相手へ慰謝料請求をするデメリット

 ⑴ 慰謝料の金額に影響を及ぼす
 不貞行為を行った当事者が慰謝料を支払う義務を負うのは,不貞行為により他方配偶者の婚姻共同生活の平和の維持という権利を侵害したためです。
 そして,その慰謝料の金額を算定する際は,不貞行為によりどの程度婚姻共同生活の平和の維持という権利が侵害されたか,つまり権利侵害の度合いが考慮されることになります。
 ⑵ 不貞行為により離婚した場合
 まず,不貞行為により夫婦が離婚し,その後に不貞相手に慰謝料を請求する場合は,不貞行為による権利侵害の程度は大きいと判断されますので,慰謝料の金額も大きくなります。
 ⑶ 不貞行為により婚姻関係が破綻した場合
 また,離婚には至っていないものの,不貞行為が原因で夫婦が別居を開始し,離婚に向けて協議や調停を行っているという場合も,不貞行為により婚姻関係が破綻したと認定されますので,慰謝料の金額も大きくなります。
 離婚の際は,慰謝料のみならず,財産分与等についても取り決めるのが通常ですので(なお離婚後の親権者は離婚の際に必ず決める必要があります),離婚調停や離婚訴訟で1年以上かかることもあり,その間に不貞相手に対する慰謝料請求が行われるのは珍しくありません。
 ⑷ 不貞行為後に別居したが婚姻関係が破綻したとまではいえない場合
 他方,不貞行為により夫婦が別居を開始したものの,離婚についての協議等は行われていない場合は,破綻にまでは至っていないと評価され,破綻されたと認定された場合よりも慰謝料の金額は低くなるでしょう。
 もちろん,別居を開始したものの,相手方配偶者が不貞行為を行ったことで強度の精神的ショックを受け心療内科等に通院することとなり,離婚の協議も行えない状態だと判断された場合は,夫婦関係は不貞行為により破綻したと認定される場合もあるでしょう。
 ⑸ 不貞行為後も同居している場合
 最後に,不貞行為後も夫婦が同居している場合(夫婦ともに離婚する意思はない場合)は,不貞行為があったものの夫婦関係は破綻しなかった,と認定されますので,不貞行為の相手方に慰謝料を請求したとしても,その金額は低くなるのが通常でしょう。

 

3 不貞行為の相手方に慰謝料請求を行うために必要なもの

 ⑴ 不貞行為に関係するもの
 不貞行為の相手方に慰謝料を請求するためには,まず,不貞行為を立証しなければなりません。
 そのためには,他方配偶者と不貞の相手方がラブホテルから一緒に出てきた際の写真など,他方配偶者との肉体関係の存在をうかがわせる証拠を準備する必要があります。
 ここで注意していただきたいのは,不貞行為の相手方が不貞行為を認める内容を記載した謝罪文等の文書は,不貞の相手方に対する慰謝料請求において有力な証拠となりますが,不貞行為を行った他方配偶者が作成した同様の文書は,不貞行為の相手方に対する慰謝料請求において必ずしも有力な証拠にはならないという点です。
 不貞行為の相手方に,その文書の内容は真実ではないと争われた場合,不貞行為を行った他方配偶者に証言をしてもらう必要がありますが,その協力を得るのは難しいのが通常だからです。
 ⑵ 夫婦の状況に関するもの
 不貞行為により夫婦関係が破綻したと主張する場合は,それを裏付ける証拠が必要です。
 離婚している場合は,離婚の記載がある戸籍のみで足りますが,まだ離婚に至っていない段階で慰謝料を請求する場合は,離婚調停の申立書など,破綻していることをうかがわせる内容の証拠が必要です。
 ⑶ その他
 不貞行為により強度の精神的ショックを受け,心療内科等に通院するようになった場合は,その診断書は慰謝料の金額を増額する方向で作用します。

 

4 不貞相手への慰謝料請求の流れ

 不貞相手への慰謝料請求は,まず交渉を行い,まとまらなければ訴訟を行うことになります。
 なお,他方配偶者に対して離婚調停を行う場合は,あわせて不貞の相手方に対する慰謝料請求の調停を行うこともあります。
 また,離婚訴訟を提起する場合は,その訴訟においてあわせて不貞行為の相手方に対する慰謝料も請求することができます。
 夫婦が別居せず離婚する意思もない場合は,訴訟で認められる慰謝料の金額は低くなりますので,交渉で解決することが重要になります。

 

5 不貞の慰謝料請求は弁護士に相談

 不貞の慰謝料請求は,訴訟になった場合の見通しも含めて準備する必要があります。
 というのも,不貞行為後も夫婦が離婚せず同居している場合は,不貞行為の相手方に慰謝料を請求しても,その金額も低くなるのが通常であり,不貞行為の調査のために興信所に支払った費用も賄えない,ということもあり得るからです。
 不貞の慰謝料請求については,お早めに一度弁護士に相談することをお勧めします。
 東京で不貞の慰謝料請求をお考えの方は弁護士法人心にご相談ください。
 

Q不倫相手の配偶者から慰謝料請求する旨の内容証明郵便が届いたのですが,どのように対応すればよいですか?

A

1 不倫相手の配偶者からの慰謝料請求

 不倫が相手方の配偶者に知られてしまった場合,相手方の配偶者から慰謝料の請求がなされることがあります。
 内容証明郵便で慰謝料の請求がされた場合には,どのように対応すればよいのでしょうか。

 

2 内容を確認する

 内容証明郵便を受け取った場合,中身を見ていないからといって請求を拒絶できるというわけではありません。
 慰謝料を請求されていることがわかっていて中身を読むことは勇気がいることにはなりますが,まずはきちんと内容を確認してください。


3 期限内に請求されている金銭を払わなければならない法律上の義務はない

 内容証明郵便では,「いつまでに」「いくら支払え」という形で慰謝料の請求がされることが多いです。
 しかし,「いつまでに」「いくら支払え」というのはあくまで相手方の要求であって,それに従わなければならないという法律上の義務はありません。
 また,相手方の請求する金額は過大である場合もあり,相場からしてその金額が妥当かどうかについては慎重に検討する必要があります。
 もっとも,放置しておくと話し合いが難しくなることもありますし,訴訟を提起されることもありうるので,早急に対応を検討する必要があります。


4 弁護士に内容証明郵便の内容について相談をする

 不倫相手の配偶者からの慰謝料請求については,個々のケースによって妥当な金額は異なりますが,相手方の請求が過大である場合には,弁護士から対案を提示することで相手方からの要求額を減額することが可能な場合が多くあります。
 不倫の慰謝料についての内容証明郵便が届いたら,その内容を確認した上で,相手方の請求が適切なものかなどについて,弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
 

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